2012年5月3日木曜日

『スペースインベーダー インフィニティジーン』を手掛ける石田礼輔氏が語る、“一生忘れないゲームを作るための5つの手法”【GDC 2012】 - ファミ通.com


 独創的なグラフィックとクールな音楽で話題を集めた、iPhone/iPod touch/iPad向けゲームアプリ『スペースインベーダー インフィニティジーン』と『グルーヴコースター』。この2作品を手掛けたタイトーの石田礼輔氏が、"Five Techniques for Making an Unforgettable Game"(一生忘れないゲームを作るための5つの手法)という題目で講演を行った。

 この講演では、ゲームの核となるアイデアを生み出す方法ではなく、思いついたアイデアをどうブラッシュアップすれば一生忘れないゲームにすることができるかという、ゲーム作りの"手法"にフォーカスしている。講演冒頭で5つの手法が明示され、ひとつひとつを石田氏が手掛けた作品での実例をもとに解説していった。

1.アイデアをキャッチコピー化する
 これは、逆説的に考えれば、キャッチコピー化できるぐらいの簡潔なアイデアであるべき、というようにも取れる。世の中にはたくさんのゲームがあり、その中からたったひとつを選んでもらうには、短いフレーズで表せる特徴が必要だと石田氏は言う。


▲『スペースインベーダー インフィニティジーン』は「進化するゲーム」、『グルーヴコースター』は「音楽ゲーム×ジェットコースター」がキャッチコピーであり、核となるアイデアだ。


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2.アイデアが引き立つように肉付けする
 斬新なアイデアを思いついたとしても、ただそれをゲームにするだけでは、ゲームが好きないわゆる"コアユーザー"にしか認知してもらえない可能性がある。ゲームがカジュアル化している今日では、コアゲーマー以外の人にも商品価値を感じてもらえるぐらいの肉づけをしなければならないという。ただし、いろいろなアイデアを盛り込みすぎて、何がウリなのかよくわからなくなってしまっては本末転倒だ、と石田氏は続けた。


▲これは『グルーヴコースター』の画面。視覚効果による表現の実例だ。写真左はアシッドハウスというジャンルを視覚的に表すために、スクエアなデザインを取り入れている。写真右はコースデザインやカメラ移動で緩急をつけることで、ジェットコースターの疾走感を表現している。

 石田氏は、核となるアイデアをゲームを構成する要素すべてでプロモーションしていくことが必要だと語った。続けて、サウンドの重要性にも言及。タイトル画面からゲームスタート後2~3分のあいだで流れるサウンドは、そのゲームの世界観の大半を決定づけるのだそう。それこそ、スタート音も大事なのだという。


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3.直感的な操作性と大げさなリアクションにする
 たとえば、プレイヤーがあるキャラクターを操作し、そのキャラクターが持っているリモコンでロボットを操るゲームがあったとする。こういったゲームの場合、キャラクターを操作することでロボットが動くという因果関係をプレイヤーが理解する必要がある。

 しかし、こうした間接的な要素は直感性とトレードになってしまう、と石田氏。間接的な要素が入り込むほど、そのゲームを楽しめるユーザーは減っていくという。直感性を確保するために、想定していたよりもゲームの難易度が下がってしまうなどの弊害があったとしても、なるべくストレスのない操作性を重要視するべきと語った。

 そしてもうひとつ、ユーザーのアクションに対して必ずオーバー気味なリアクションで応えることも重要なことだという。

▲『スペースインベーダー インフィニティジーン』では、モノクロのドット絵というレトロなイメージに、『スペースインベーダー』の時代ではあり得なかったグラデーションを合わせた。写真右はボツになった案で、社内での「少し地味ではないか?」という要望に応えたもの。しかし、派手に演出するということが世の中に溢れた表現方法だったため、違和感を演出できなかった。けっきょく、写真左が完成形となった。

石田氏は、「ゲームは、気軽に話しかけられるリアクション上手の人を作るつもりで」と、このパートをまとめた。


4.少し違和感を入れる
 違和感という言葉そのものには悪いイメージを持つ人もいるかもしれないが、パッと見てすべてを理解できてしまえるようなものよりも、少し違和感があるぐらいのほうが、その違和感の正体を見極めようとする好奇心を呼び起こせるのだそう。ただ、これもさじ加減が重要で、違和感を入れすぎると、ユーザー側に理解することを放棄されてしまう。


▲『スペースインベーダー インフィニティジーン』では、ゲームのやり込み具合が視覚的にわかる仕掛けになっている。系統樹のようなメニュー画面はプレイヤーの進行状況によって形が異なり、"自分のゲーム"という感覚を煽る。


5.ゲーム+αの価値を作る
 最後の手法は、画面内だけで楽しむのではなく、実生活でも価値を生み出せるものを作るということ。世の中には、アレを持っているとカッコイイ、あの作品を知っている人はクール、といったステータスがある。ゲームをスタイリッシュに、カッコよくして、ゲームを持っていることをステータスと感じてもらえるまで高めたい、というのが石田氏の想いだ。



▲『グルーヴコースター』ではプレイヤーの名前がクレジットに入る。こうした、もてなしの要素も必要だろう。

 そうするためには、ゲーム中にユーザーの個性を反映させ、思い出を増幅させることが重要だという。ゲームを広めるために、費用対効果がもっとも優れているのはバズ(口コミ)であると石田氏。いいゲームを見つけた、このゲームは自分にしっくりくる、といった感覚は誇りを生み、それがいいバズにつながっていくと語り、講演を締めた。

 今回の講演で感じたことは、今回挙げられた5つの手法すべてがユーザーの方向を向いているということだ。ゲームのアイデア(テーマ)の提示のしかた、表現、操作性、付加価値など、プレイヤーに対してどうアプローチしていくかが語られていた。石田氏が手掛けた2作品は、こうした姿勢によってプレイヤーからポジティブなバズが発生し、いい循環(まさ� �インフィニティ!)が起こっているのだろう。


▲講演の最後は、指を"∞"の形にして「インフィニティ!」



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